トリップ
「でも」
「でも、何だ?」
「あのデパートで会った日まで、色々見てきました」
「色々・・・?」
「先輩のいい所」
「・・・俺にいい所なんかないぞ。むしろ残酷、だからあの学校の一員にも嫌われるんだ」
また何か押し殺したような顔になる。自分のことを自傷するのが当たり前と言うことを植えつけられてしまったようだ。
「そこは多分・・・見れてないだけだと・・・」
「何が」
「やから・・・優しい所」
「馬鹿な。俺がいつそんな所を見せたんだ」
「道に迷った子とか、ネズミの親子とか、先輩の仲間とか・・・」
「あれでも、優しいの部類に入るのか?」
「完全に酷い人間には、見えないです」
「そういう風に見ているから、あの教師達の言う事にも賛成しないんだな」
「賛成していいようなこと言ってないんです。あの人んたぁ」
「・・・君は、酷いくらい優しすぎる」
そう言ってから、リクは辛そうな顔の力を抜き「でも」と否定文に変えて言う。
「君と会ってから、何となく、淋しくなくなって、にぎやかな気がしてきた」
ポゥ、と体内が暖かくなる。当時に聞かされたのと同じ言葉が聞こえてきて、また、人を少しでも喜ばすことが出来て、嬉しかったのだ。
『エリカちゃんとおるとさぁ、そん時だけ明るくなれるわ。うち、凄い楽しい』
以前まで悲しさだけをまとった人が、こうして明るくなってくれたことは凄く喜ばしい。喜びで自然と嬉し泣きしてしまう。無意識に涙が出ていた。
「そりゃ・・・よかった・・・」