トリップ
「平和になっても同じだ。裕福に育っても、それとは違った快感を覚えようとする無駄な欲からにいじめ、今の地位で十分なのにさらに上の者のゴマをすって地位を上げようと無駄に動いている奴ら。それと、立場的強者に逆らえずに、殺人犯を無駄に野放しにする警察」
最後の部分を特に強調しながら言うので、少し気迫を感じる。
「それと比べれば、自分が生きていくためだけに必要な能力だけ揃えたナマコのほうが、偉い気がする」
「そんな人ばっかじゃないですよ」
エリカがそう言うと、リクは「当たり前だ」と言い返すような言葉になる。
「皆が皆そうなったら、ゾッとする。紅涙の連中のような奴らばっかりじゃあな」
「やっぱり、あの先生の事嫌っとる」
「嫌いにならないほうがどうかしてる」
苦虫を噛み潰したような顔からすると、リクはもう思い浮かべることすら嫌になるということが覗える。
そして「おっと」と呟いて話を戻した。
「じゃあそうだな、俺が殺してるところ見たことがあったろ」
「あった日と同じ日」
「そう。あの時はどう思った」
「そりゃ・・・怖かったですよ。ほんとにうちまで殺されるんじゃないかって・・・」
「・・・ふ、そか」
さすがにそこはそう思ったか、とリク困ったような笑みを見せる。先輩は最近よく笑う、と思いエリカもクスッと小さく唇を歪めた。
――良かった。前より明るい。
自分の内側に、火が灯った気分になる。