トリップ

あんなにも子供を大切にしている親を見ると、心が痛んでくる。脈打つように、ズキン、ズキン、というリズムが刻まれた。

何なんだよ。

―結局、おれは・・・普通になりたいんじゃねぇか。

今更遅いんだよ。自分に言いかけながら、あの親子の事を頭から消そうと思い、頭を左右に振ってから小走りする。

途中にも様々な情景が映った。腕を組むカップル、高校生、サラリーマン、ティッシュ配り、俺はなるべくこの世界を見ないように、下を向いて歩く。

―俺もあの時、あの男の口車に乗ってなければ・・・。

あんなふうに普通に歩いて、育って、いずれは高校生同士という形で『アイツ』に出会うことができたのかもしれない。

何で今になって、普通の生活に戻りたいと思うのか、不思議だ。それであって、悲しい。

この仕事に対する罪悪感と、普通でないことの悲しさが交差する。あのかぎ爪の守り屋の時も、慣れてきた時ならなんとも思わないのに、何故か、ひどく心残りだった。

「あ、三宅君じゃね?お久~」

調子のいい声が途中で聞こえてくる。見てみると、俺は再び「最悪だ、マジで」と本当に口にする。ばさばさのまつ毛、巻いてある明るい茶髪、化粧万全の顔の女は、中学生時代に少しだけ付き合っていた女。

「誰だれ?」
「中学の時、付き合ってたの!」
「へぇー、綺麗じゃん!」

女と一緒にいる集団が、俺のほうを向いてくる。先程会いたくない人間に会ったばかりなのに、なぜまた嫌な女と出くわすのだろうか。
お前なんか、告白された時から好きじゃねぇっつうの。

―本当に好きなのは、お前らみたいに軽くない。

「ねーねー、今なにしてんの?」
「別に・・・」
「うちらと遊ぼーよ!1人ってことは、暇なんでしょ?」
「暇だけど、お前とは嫌だ」


< 387 / 418 >

この作品をシェア

pagetop