トリップ

「おい!!」

シンゴの声で、キャプテンはやっとガラスコップを握りつぶし、右手から流血している事に気づいた。
もうほとんど食器を洗い、空になった水道に血が流れる。
幸いにも手首などの動脈は切っていないようだが、何故痛みに気付かなかったのだろうとある意味で疑問に思う。

「やべ、切ってまっとることに全然気付かんかった。」
「痛みも感じんって相当やなお前。」
「どーしっましょー♪」
「どうしましょうじゃねぇ!はよ手当てや!」

急いで包帯を抱え、シンゴがキャプテンの手に巻く。
包帯を巻きながら、不安げな顔でシンゴはキャプテンを見る。

「お前まさか・・・〔あの事〕思い出したんやないやろうな?」

あの事とはキャプテンの暗黒時代を指しているのだろう。
ギクリとしたキャプテンを見て「図星か」と、溜め息をつく。

「キャプテンっていつも何か考えると周りが見えんくなってまうで、そこ気をつけな早死にするで。」
「まさか。妄想で早死になんて聞いたことあらへんし。」

こんな風に笑っている頃には、先ほどのトラウマの件などすっかり忘れ去られていた。
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