トリップ

「・・・もう、出てきていい。」

そう言われたのに気付き、ゆっくりと壁から顔を出す。

「さっきの子んたぁ(子達、という意味。)の誘い・・・何で断ったんですか?」
「嫌だったからな。ああいう連中。それに、もっと君と話したかった。」
「え・・・?」
「?何だ?嫌か?」
「い・・・いやそういうことやなくて・・・。」

何故か顔が火照りだした。なにせ、あまり男性とは話したことが無い。基本女性としか馴れ合いが無いのだから、そういう経験がないという恥ずかしさからだ。
すると、リクから「フッ」と微笑むような声がした。

「?先輩・・・今笑いました?」
「・・・いや、笑ってない。」

その場しのぎの様な口調。だが、微かに彼の口元が歪んで見えた。

「何をうちと、話したかったんですか」
「色々だ。久々に、他の奴らとは話したことの無い会話ができそうだからな」
「どういう話・・・」
「君は他人とはどこか違う」
「違うって・・・」
「ああ、疑問に思ったことにはとことん突っかかってくる所とかだ」
「だって・・・気になるというか、放っとけないんですよ」
「相手が放っておいてほしくても、か?」
「そんで相手がもっと淋しくなったら、うちは嫌やし」

リクはキョトンとした顔になると「俺のときもそうなのか?」と聞いてくるので、言葉を詰まらせる。孤独感はあったが、正直な所まだ確信には近づいていない。





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