気付いてよ
「そんな泣きそうな顔してると、拐いたくなるでしょ。と、それは置いといて。まずは、やっぱりメアドかな。教えてくれますか?」
そう言って携帯を私に向ける。
またすごい感じの言葉が聞こえて来たけど、聞こえないふりをして私も自分の携帯を向けた。
ディスプレイに写し出された大倉洋平の文字。
決定ボタンを押して登録する。
「次は僕が受けるね。」
うん、と短く言って自分のアドレスを送った。
春ならよく見かけるこの光景は、夏休みも過ぎてしまった今の時期ではなかなか見られない。
季節外れのアドレス交換。
何かかが少しずつ変わる-
そんな気がした。