気付いてよ

結局少しも気分なんて良くならないまま6時間目のい終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

仕方なく鞄を取りに教室に戻ろうと、屋上を後にした。

廊下を歩いていると、ざわざわとした生徒の集団とすれ違った。
移動教室の帰りか、そんなことを思いながら俺は特に気にも留めず歩を進める。

ふと、見覚えのある容姿が俺の視界にフェードインしてきた。

もちろんそれは見間違う筈もない、俺の幼馴染。

結構遠くにいるけど、昔からなんでか知らないけど奏だけは分かるんだ。
恐るべし幼馴染みパワーってやつ。

「かな…」

気付けば声を掛けようとしてる俺がいた。

でも、そこまで言って口を噤む。
そうだ、声を掛けていったい俺は何をしたかったんだ。

もう自分の行動も訳が分からなくなってきてる。

きっと、寝てないからだよな。

いや、絶対そうだよな。

早く帰ってしまいたかった。
俺は歩くスピードを上げて、足早に敢えて奏には気付かないふりをしてすれ違う。

すれ違う瞬間、何故か緊張した気がした。

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