気付いてよ

ドアの音がしたのに、ただいまの声が聞こえなかった為かお母さんが奥から出てきた。

「やっぱり、帰って来てたのね!もう、ただいまはちゃんと言わなきゃダメじゃない。」

相変わらずなお母さんの態度になんだかほっとする。

「ぼーっとしちゃって、ごめんね。ただいま。ちょっと着替えてくるね。」

私は素直に謝って部屋に入った。
おかあさんは着替えたら手伝ってね、と言ってキッチンに戻っていった。

鞄を置いて、部屋着に着替えた。
鏡に映った自分を見て不と呟く。

「別に地味って訳でもないと思うんだけどな。朋の周りが派手すぎるってだけで…」

負け惜しみとかじゃなくて、私の意見は正しいと思う。

でも、朋の周りにいるような女子を想像すれば、洩れなく私の判断が間違っていると指摘されるに違いない。

結局のところ私自身も臆病なんだ。

今の幼馴染っていう関係を壊したくなくて、想いを告げられずにいるだけなのだ。
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