花には水を
「先輩はそう思うんですか?」
少し、目にかかる茶色の髪の毛をかきあげて、整った眉を見せる。
「・・・じゃあ、どうして」
何処が?
私には、分からない。
思いつかない。
嫌う要素はあるけれど・・・。
木立連が私を好きになる要素なんて、全くと言っていいほど・・・・いや全くないと言い切れる。
「・・・朝、先輩は俺の前を通り過ぎましたよね?あのとき、自覚したんです」
あげていた手を下し教卓の上に座って、彼は私を見つめる。
黒い彼の瞳は、ずっと私を捉えていた。
まるで蜘蛛の糸に絡まれた蛾のよう・・・彼に捉えられた私の体は動くことも出来ない。