花には水を
「沢先輩と、先輩二人で・・・手ぇ繋いで・・・俺の前を俺を見ずに通り過ぎた先輩を見たとき、無性に思った」
彼の口が動いて、ピクリとも動かない真剣な表情にドキンとした。
ぐっと、垂れていた手の平を握って私は目を瞑る。
暗闇で、冷たい部屋の中にいるはずなのに・・・身体全体が熱を帯びた。
“ 奪い去りてぇーって・・・ ”
夢のようだった・・。
夢でもいいと思った。
「・・・でも、関わらないでくれって先輩に言われた事を思い出して、俺は追いかけることが出来なかった。・・・弱いなぁーって思う・・」
木立連の瞳が私から離れた瞬間、絡まれた糸が解けたように体が軽くなる。