夜中散歩
唖然とする小雪さんと、息を呑んだお客さんたち。
「なんかすいません、空気悪くしちゃって」
私が頭を下げると
「真希!さすがだ!」とどこかから飛んでくる声。
頭を上げれば吉原さんが笑っていた。
その声と同時に、何人かのお客さんが同じように「真希ちゃんかっこいい!」などという言葉を送ってくれた。
「正義のヒーロー!」
由梨も言う。小雪さんが笑う。
「んー、じゃあなんか歌おうかな!歌本下さい!歌本!」
ボーイが歌本を持ってくるまでの間、私は小雪さんに言った。

「大丈夫?」
声をかければ「全然、あぁいう客困るよね」と笑う。
「ほら、なんか歌うよ」
小雪さんの手を引けば歌本が渡される。
でも、小雪さんに考える余裕など与えさせない。
「LOVEマシーンかけて!」
そう言って少し経てば、店内にカラオケ音が流れ始める。
お客さんの笑顔と女の子たちの笑顔。
Dearestに来て心底良かった、そう思える瞬間だった。
落ち込んでいた小雪さんの表情も少しずつ晴れていく。
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