Kiss★恐怖症
そんな時だった。


ぐらっと乗り物が揺れた。


背筋に何かが冷ややかなものが通る。


「いやっ…」


怖い…っ!落ちる!


私は、体をぎゅっと縮めて、耳を両手で塞いだ。












―――――…



揺れがおさまった。


と同時に、私の横に温かい熱が触れた。



「…ごめんな…無理矢理乗せて…」


そして塞いだ耳の横から直樹の声が微かに聞こえてくる。


ぐらり揺れたのは、直樹が席を移動したせいみたい。


私は恐る恐る、耳から手を外し、顔を上げた。


観覧車に乗って初めて見た直樹の顔は。


なんだか切ない顔をしていた。


なんだろう。


胸がずきずき痛む。


怖い感覚より胸の痛みのほうが大きくて。


私がこんなのだから。


私がめんどくさい女だから。


直樹にこんな顔をさせてしまうんだ。


私。


どうしたらいいの?


どうしたら直樹に切ない顔を消せる?





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