The ring is a cupid
本編
「あはは、そうだね」


いつからだろう。

君のそんな笑顔に見とれるようになったのは。


自分でも良く分からない。


この17年間。私は恋愛に興味が全く無かった。


こんなもどかしい気持ちも、苦しさも。

つい最近知ったばかり。


「おい、弘希。この問題解いてみろ」


「えっ…マジで?」


数学の時間名前を呼ばれて渋々腰を上げる彼、斉藤弘希(さいとう ひろき)。


肩に触れるか触れないかの黒い髪。

健康的な少し焦げた肌。


斉藤くんはサッカー部に所属している。

彼がボールを蹴っている所は一度も見たことはないけれど。


「詩音、お前も解け。授業中ボーっとすんな」


「えっ!?私も?」


斉藤くんと並んで黒板に数式を書かなきゃいけないって事だよね?

心臓バクハツするっ!!


…なんて心の叫びは誰にも届かず。

私は先生をちらりと睨んで黒板へ向かった。


スラスラと答えを書いていく斉藤くん。


長くしなやかな指がチョークを滑らせる。



問題、問題を解かなきゃっ。


言い聞かせながらも、震える手でチョークを握った。
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