王子とカメ子


「…いや、うん。
陰で王子って呼ばれてんのは
知ってたんだけどね。
面と向かって言われたのは、初めて…かな。
みたいなね…?」


「???」


「…王子じゃないしね、俺。」


「えっと…?」


だめだ。頭おっつかないや。

私、バカなんだから
分かりやすく言ってよ、王子。





「とりあえず、王子って呼ぶの
やめて。すごい恥ずかしいんだよね。」


「分かります!
私もカメ子って呼ばれるのはすっごい恥ずかしいです!!」


「…カメ子?」


「はい!あだ名です。」


「…なんか、違う気もするけど、まぁ、そんな感じなんだよね。」





王子って素敵なあだ名だと
思うけど

あだ名ってやっぱり
みんな恥ずかしいんだなぁ







「みんな、"皆瀬"とか"湊司"とか呼んでるから、適当に呼んでね。」



「…適当 ですか。」


「うん。」




王子は2年生のはず。

先輩だ。

じゃあ"皆瀬"とか"湊司"では
だめだと思う。

てか、だめだ。

うーん…







「……ふっ」

突然、王子がクスクス笑い出した。


「なんですか?」


「そんな真剣に考えなくていいんだよ。」


「いや、あの、絶対に王子以外じゃないとだめですかね?」


「だめ。俺、王子じゃないもん。」


「…ですよね。」


「湊司。」


「…はい?」


「湊司でいいじゃん。」


「いや、でも、先輩なので!」


「じゃ、湊司先輩で。」


「…はい。湊司先輩で。」



そう言うと「はははっ」って王子は笑って私の頭をぐしゃぐしゃにした。




「ちょっ…
今日は珍しく寝ぐせ付いてなくて真っ直ぐだったのにぃ…」


「あはははっ」










…王子、好きになってしまいました。





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