可愛いって得じゃない!?
晴美‐‐‐

「聞いたかい!?晴美ちゃん!」

お客さんのカウンターに料理を置いて戻る途中の私に、白髪交じりのひょろっとした年配の男性が声をかけてきた。目が鋭くて油断ができないお客さんだ。

私は素早く駆け寄って話を聞いた

「何をです?」

「知ってるだろ!…あの女みたいな顔した男!」

「…」

「快晴だよ!」

「快晴?」

「さっき見ただろ、階段から下りてきた…アイツが快晴ってんだ」

「へぇ…じゃあ、あたしランさんのお手伝いあるからこれで…」

「待ちな」

男は私を眼力で引き留めた。とても逃げられなかった。私は浮いた腰を下ろして話を聞くことにした

「安心しな。女に不自由してるわけじゃねぇ…」

だったら離してほしい

「快晴の話だが…あいつ、ここの息子じゃねぇ。顔なじみの奴らはみんな知ってる。あいつは親なしでな、あんたがくるだいぶ前にここに来た。…そういやあんた3日前に来たばかりじゃねぇか」

そぅ言うと男は鼻で笑った。話は長そうだ。煙草を出して火を付けながら男は話を続けた。

「まあ、ここの夫婦は人がいいそれはあんたも知ってるな。だがな、あんたも女だろうが快晴と比べたら……」

それから私を頭の天辺から爪先までジロリと見ると深いため息をついてこう言った

「残念だな」

腹立つ。男に負けた。

「お前色気ないのに良くここにいるな。ちゃんとオヤジとお袋に恩返ししろよ」

「…」

「…ふん、意外と賢いな。ま、いいや。話の続きだ。」

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