春の旋律



レッスン最終日。


私は今までになく集中して、レッスンを受けた。


「すごいすごい!……とっても上手になりましたね。」


「ありがとうございます……先生の教え方が良かったんですよ。」


「そう言ってもらえると、嬉しいです」


二人で顔を見合わせて笑う。


でも私は上手く笑えなかった。


先生への返事のことで、頭がいっぱいだったから。


まだ、答えは出ていない……。


……私は、なんとなく先生の演奏がもう一度聞きたくなって、おねだりしてみた。


「先生……最後にもう一回、あの曲、弾いてくれますか?」


「あぁ……。もちろん、いいですよ。僕の練習に付き合ってくれたお礼です」


そう言って先生は静かにピアノを弾き始めた。


やっぱり上手だ……。


私なんて、遠く及ばないや。


……やっぱり、早過ぎる。


もっと先生のこと、知りたいし、ピアノももっと上手になりたい。


私は、先生の演奏を聞いているうちに、一つの答えが自分の中で出たことに気付いていた。




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