きいろい青空【完】



俺は4階へ向かう。



エレベーターに乗り、ゆっくりと上がっていく。


気付くと手が震えていた。




必死に止めようとするが無駄。



手術…?


そんなに悪いんだろうか…?



不安だけが積もる。




しばらくすると、エレベーターは止まり、長い長い廊下になった。



歩いていくと【手術中】という赤いランプが光っているのが見えた。





「あ、父さん!ちーちゃんも!なぁ、どうなの…?」



近くの長椅子には、父さんとちーちゃんが座っている。


ちーちゃん(智恵子)とは、花恋の母さん。




「今、始まったばかりだから。待ってろ…」



じっと一点を見つめたまま、静かに答えた父さん。



俺も父さんと向かいの長椅子に座る。




それ以上、何もきかなかった。


誰も何も口に出さないで、ただひたすら待っていた。



無事を祈って…




--------。




パチッ…!!


【手術中】の赤いランプが消えた音とともに、目が覚めた。


待っている間、寝てしまっていた。




一斉に手術室の前へ駆け寄る。


扉が静かに開き、中から先生が出てきた。




「先生…!父は…っ?」



父さんが声を上げる。



父さんや母さん、ちーちゃん。



そして、俺。



みんな、息をのみ先生の言葉に集中する。




「成功です。心配いりません。あとは、目が覚めるのを待つだけですよ」



微笑みながら言ってくれた主治医の先生。


その言葉に安堵の息をつく。



先生の言葉が、すごくありがたかった。



「ありがとうございます…!」



みんなで頭を下げる。




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