きいろい青空【完】
もう嫌だ。
大切な人を失うのは…
もう、絶対に嫌だ…!
「大丈夫?手、震えてるわよ?」
信号待ちをしている先生が俺の手を見た。
「え?あ、大丈夫です…」
俺は無理矢理、右手を左手で押さえ込み震えを止めようとする。
まったく自分では気付かなかった。
震えていたなんて…
前方には、病院の白い建物が見えた。
「はい、着いたよっ」
「はい…!」
車から降り、病院へ入る。
前と同じだ。
この景色と、この匂い。
すべてが怖いこの気持ち…
辺りを見渡し、母さんか父さんを探す。
そして、ナースステーションの前の長椅子に座る母さんを見つけた。
走って近寄る。
「母さん!!じいちゃんは?」
「直輝っ!今は、まだ手術している…」
うつむいて答える母さん。
そんな母さんが誰かを見つけ頭を下げた。
振り向くと先生が立っていた。
「あいさつしてくる。直輝は、先行ってて。4階の突き当たりの手術室」
そう言って母さんは先生のもとへ行った。