空に手が届きそうだ
どんな思いで、会話を聞いていたのだろうか。
その目には、悲しみが留まっていた。
「なんだ、いんじゃん。」
そんな姿を嘲笑うように言う、クラスメート達。
その目には、勝ち誇ったような輝きが宿っている。
「また、純ちゃん巻き込んだんだ。」
「この前のも、純ちゃんに迷惑かけたよね?」
畳み掛けるように、まるで咎めるように言葉を浴びせた。
「だって、あれは事実でしょ?」
「んな訳ないじゃん。」
「私達が、貴方をいじめていたなんて事実誰が信じるのよ。」
ねぇ~と、周りに同意を求めると各々が首を縦に振った。
まるで、当たり前だと言わんばかりに
「お前ら、よくそんな事が言えるな。」
「だって、私達やってないもん。」
ねぇ~と、嫌味が聞こえた。
「それに、私達にネクラをいじめる理由がない。」

「あるよ。」
ぎっ、とそれまで黙っていた優が彼女達を睨み付けた。
「何?」
彼女達も、負けじと睨み返した。

「加瀬君。」
ぐっと、言葉を飲み込んでしまった女子生徒達。
「優、」
微かに震えたように見えた。
「話す。」
そう言って、また離れた。
純一郎は、思いっきり扉を開けて、彼女達から優が見えるようにした。
「話して」

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