空に手が届きそうだ
最初で、最後の帰り道。
─―‥‥
―‥
「疲れた……。」
純一郎は、机にべたっと、くっつくように体を投げ出す。
「お疲れ様。」
優は頼まれた最後のプリントを揃えると、綺麗にホッチキスで左端を止める。
あっという間に終わった一日。
「そろそろ帰ろっか。」
「そうだね。もうすぐ、6時だし。」
「本当だ………。」
腕時計を見ると、六時五分前だった。
あっという間に、終わった一日。
沢山の仕事を頼まれもしたが、それなりに楽しかった。
文化祭のプログラムの確認、大人達の仕事の手伝い、ポスター貼りや生徒会で使うらしい書類閉じが、ようやく終わった。
「ってか、絶対流ちゃんだよね俺らが居る事言ったの」
ゆっくり、机から体を剥がしながら言った
「でも、楽しかったね、今日一日。」
仕上げた書類を、重ねてきれいに隅を整える。
「持ってってくるから」
「ありがと」
純一郎はそれを優の手からそっと受け取る。
「鞄、用意しといてな」
と言って、部屋を出て行った。
(はぁ……。)
一人になった部屋で、ため息をつく。
これからの事を考えると、憂鬱で仕方ない。
「どうやって、言おうかな、引っ越しの事……。」
机に散乱した自分の荷物を鞄に入れながら、呟いた。
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