空に手が届きそうだ
胸にすとんと落ちてきた言葉は、やけに優しい。
「安心する。風花と喋ってたら」
「本当に?」
うんと頷くと、風花はよかったと言った。
優は、たわいのない話しが出来るほど、楽しい事は無いと思う。
「もうすぐ、タイムリミット。」
「それまで、楽しまないとね。」
「本当」
他愛ない事をいろいろと喋っていると、いつもの大通りまで出てきた。
道路を挟んだ向こうにある今日の待ち合わせ場所は、少し寂しそうにそこにあった。
「ねぇ、優。」
「ん?」
信号待ちをしていると、ふいに話しかけられた。
「学校楽しい?」
「あんまり、楽しくない。」
「私も楽しくない。」
俯く横顔は、携帯を見つめている。
風花は、見てと言って携帯を見せた。
「家にも居場所が無いから、些細な反抗。」
画面には、風花とアイドルの小椋みうが派手なギャルメイクをして笑っている。
「いいじゃん。」
今の風花からは考えられない笑顔だ。
「今日は、どんな風になるの?」
優に言われて、そういえば、言ってないなと思った。
「今は、内緒。」
青になった横断歩道を、半歩先を歩く風花。
その背中はもう、ただの少女からモデルとしての風花として凜としていた。