空に手が届きそうだ
深は、優と斜めになるように座った。
すぐ隣にある、優しい笑顔。
「気、使わせちゃったみたいでごめんね。」
「いいよ。そんなに、気にしないから。それより、今何時?」
時計は、もうすっかり日を跨いでいた。「ごめんなさい。今日も、仕事なのに」
「別に、いい。昼からだから」
う~んと、大きく伸びをした。
「寝る?」
「いや、待ってる。」
そう言いながらも、机に突っ伏した。
「出来たら、起こしますね。」
「ごめんな。」

深の、寝息を聞きながら優は言葉を探した。
一生懸命、伝えたい事を機械文字に託す。
(本当は、直接言いたかったな。)
そう思いながらも、言葉を紡いだ。

───…
―…
「出来た。」
みんなへのメールが出来た頃には、深もすっかり夢の中。
「すぐ、布団敷くから」
返ってこないのを承知で、起きないようにそっと動いた。

「ん~……。」
急いで、深の後ろに布団を敷く。
「優………?」
「起こした?」
「いや、大丈夫だ。」
けだるそうに、深は体を起こした。
「終わったか?」
「なんとか。」
「それは、良かった。」
深は、シーツを敷く優を見ながら大きく欠伸をした。
「布団、敷けましたよ。」
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