空に手が届きそうだ
「悪いな。」
深は、のっそりとけだるそうに、何枚か着ていた服を脱いだ。
「着替えないんですか?」
「めんどくさい。」
すっかり、楽な格好になった深。
「ズボンは?」
「別に、いい。」
ごろん、と大きな体を引きずって倒れるように布団に寝そべった。
「優、」
おいで、と手招きする深に着替えてくると言ってジャージを探す。
「そのままでいいだろ?」
「しわになるから、嫌だ。」
ジャージと、Tシャツを持ってトイレに入る。

くたくたに、なった体。
長すぎた一日が、頭の中を駆け巡る。
(最後か……。)
行く、と言った手前心残りはあるが仕方ない。
あれだけの荷物。
一日はかかるだろう。
はぁ、とため息をつく。
幸せは、もう逃げた。

「遅い。」
すっかり、楽な格好をして出ると深が痺れを切らして待っていた。
「ごめん。」
適当に、洋服を部屋に散らかす。
「ちゃんと、片付けろよ。」
「わかってる。」
後悔だけが、後戻りする。
「電気、消すね。」
深の返事も待たずに、一瞬で消した電気。
「暗いと見えねえだろ?」
「感触でわかる。」
柔らかい、布団を感じるとそこに寝そべった。

軽い、掛け布団をかける。
隣には、優しい温もり。
「おやすみ」
「おやすみ」
優は、ゆっくりと瞼を閉じた。
さよならを、明日に残して
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