鏡の中の僕に、花束を・・・
2
コンビニでバイトしていた。何か難しい事がありそうな、そんな仕事ではない。簡単な仕事のはずだった。
「おい、千代田。」
先輩が呼んだ。茶髪の先輩が怖かった。なるべく目を合わさないようにしていたのに、声をかけられた。
それだけで、お腹がきりりと痛んだ。
「なんですか?」
「あのさ、冷蔵庫に行って商品補充頼んでいい?」
嫌がらせだ。僕を冷蔵庫の中に閉じ込める気だ。
「え、あ・・・。」
「じゃ、お前がレジやるか?もうすぐ混む時間だ。捌けるか?」
今度は別のいじめだ。レジの作業は知らない人がたくさん来る。知らない人に見られるのも、話しかけられるのも苦手だ。僕を陥れる気だ。
「・・・。」
「その様子じゃ無理だな。俺がレジやるから、冷蔵庫よろしくな。」
先輩は無理矢理、僕に押しつけた。

冷蔵庫の入り口に掛かっていたジャンパーを羽織った。
「面倒くさい・・・。」
呟きと白い息が交じった。
冷蔵庫は店の商品棚の裏に繋がっている。一番奥の商品の向こうは、店の中だ。小さく客が何人か見えた。
「寒い。寒い。」
缶ジュースやらペットボトルやらを、どんどん棚に置いた。缶も冷たくなっており、軍手をしていても嫌になる。
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