鏡の中の僕に、花束を・・・
13
夕陽はまだ沈みきっていない。でも、僕は帰る事にした。これ以上、彼女とい続けたら、僕の心臓は激しく脈打ちし過ぎ壊れてしまう。だから、そうしなければならなかった。
「あ、今日は、ありがとう。」
玄関先で言った。喉が渇く。言葉が出しづらい。
「ううん、それよりいいの?せっかく、お茶用意しようと思ったのに。」
「い、いいんだ。用を・・・思い出したから・・・。」
もちろん嘘だ。それは彼女もわかっていたはずだ。
「残念だな・・・。」
「ご、ごめんね。」
「ううん、仕方ないよね。でも、今度はちゃんとお茶飲んでいってね。」
「うん。」
こんな風にしても、まだ僕を誘ってくれる。うれしかった。
「じゃ、またね。」
「うん、明日。」
僕たちは指を絡ませた。どちらからはわからない。気がついたら、そうなっていた。なかなか解けない指。
その指が解けたのは、少し薄暗くなってからだった。
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