雨に似ている
不協和音
 いきなり 不協和音が鳴った。



突然の音に耳を塞ぐ者、「チッ」と舌打ちをする者、睨み付けるように見つめる者。




一瞬の間に、店内の静寂が喧騒に変わる。




彼は、ざわめきの中。

ピアノを閉じ、瞳に滲んだ涙を拭いながら足早に席に戻りカバンを手にし、レジに向かった。




岩舘理久が血相を変え、彼を呼び止める。



「おい!……詩月」

彼は凍てついたように理久を見上げ、掴まれた手を払い、無言で会計を済ませると、振り向きもせずにカフェ·モルダウを出た。



< 2 / 215 >

この作品をシェア

pagetop