雨に似ている
窓枠から見えるのは、四角く小さな空と見慣れた街並みで。




部屋を見回し白い壁、ツンと鼻をつく独特の匂いと手首に刺さった点滴の針に「またか」と溜め息が漏れる。






自分が今、何処にいるのかに気付く。





申し訳ないことをしてしまったな。


演奏どころではなくなっただろうに……。




「モルダウ」の常連客には、先日の演奏放棄といい今日といい、人騒がせな奴だと思われただろうな。






安坂さんの叫ぶ声を聞いた後の記憶がない。




窓枠から、濃い灰色に染まった四角い空を見つめる。



今日は泊まりだなと思い、肩を落とす。




「気付いたか?」




私服姿の理久が、病室を覗き込み、ツカツかと入ってくるなり平然と話しかけた。



< 50 / 215 >

この作品をシェア

pagetop