雨に似ている
横顔
――長い睫毛、筋の通った鼻、薄い唇……。




郁子は黒板の文字を番書する手を止めて、斜め前の席に目を向ける。

郁子の斜め前、詩月の席。


詩月は、まだ少し顔色が冴えない。




数日前。
郁子は「雨だれ」の演奏中、耳を裂くような貢の叫び声を聞いた。




カウンターの中でサイフォンをたてていたマスターが、顔色を変え郁子も演奏を止めて、騒ぎの中心に駆け寄った。




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