白銀の女神 紅の王
『……レ…ナ……』
断片的だが、耳に入った声に、ピタリと足が止まる。
まさか………
今まで、静かだった心臓がドクンと跳ねる。
そんなわけない……
けれど――――
『エレナ』
ッ………!
今度は、はっきり聞こえた。
闇を切り裂く閃光の様に、はっきりと…
『エレナ……』
今度は、切なくも、温かさに満ち溢れた呼び声。
まだ、引き留めてくれるの……?
サァ……――――
立ち止まった場所に吹く、一陣の風。
頬を優しく撫でるその風は、深い闇を一瞬にして吹き飛ばした。
そして、ふわりと頬を包む温かい手。
咄嗟に振り返るけれど、そこには誰もいない。
けれど、見えなくとも、誰のものか分かった。
私をここから助け出してくれる人なんて、貴方しかいないから…
幼い自分が欲した両親でもなく。
孤独を埋めてくれたジェスでもない。
その人は……―――――