白銀の女神 紅の王



フッ…と、ゆっくり目を開く―――

同時に、目の端から熱い涙が零れる。



結局、戻って来てしまった……

視線の先には、見慣れた天窓。

今は夜なのか、天窓から射す月の光が、涙で濡れた瞳に、やんわりと温かい光を落とす。

とても長く闇の中にいたせいか、月明かりでも眩しい。

きっと、随分眠っていたのだろう、体が鉛の様に重い。




「っ………」

何とか、腕の力だけで上半身を起こす。

ふと、自分の腕を見れば、少し細くなっているようにも見える。

矢が刺さった背中の痛みも今はないことから、やはり、だいぶ時間が経っている事が分かった。



あれから、どれくらい経ったのか……

シルバは無事なのだろうか……


そんな漠然とした不安がわく。

そして、湧き上がる不安から、部屋を見渡した時だった。




「ッ………!」



月光のカーテンのその向こう―――



暗闇の中にいたその人に、大きく息を飲んだ。

ベッドサイドの椅子で、腕を組んだまま俯くその人。


闇夜に溶けてしまいそうな漆黒の髪。

今は固く閉じられている瞳は、燃えるような激情を湛えた紅。






「シルバ……」



小さく呟いた声が震えた。



< 441 / 531 >

この作品をシェア

pagetop