___死神だ」
「君は死んだ」

 初めて、その人が口を開いた。いや、口なんか無い。でも、開いたのだ。

「空をごらん。こんなにも晴れているじゃないか。こんなにも明るいじゃないか。それに君は、私の事を君だと言ったが、私にはちゃんと頭もあるぞ」

 その人に言われて、私は無い顔を挙げる。しかしその瞬間、さっきまで見えていた灰色の雲、真っ暗な世界が、……何も無くなった。何も無くなってしまった。真っ黒だ。
 今度は無い顔を前に向ける。その人の姿さえ無い。もう、何もかも真っ黒だ。

 私は無い頭を横に振る。

「そうか、残念だ」

 その人の声色は、それほど残念そうでは無かったが、私の癇に障ることは無かった。

「それじゃあ、ついてきてもらうしかない」

 その人は無愛想に言って、背中を見せた。
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