蔓薔薇
私は、咄嗟に彼の胸に
顔を埋めた。
 
こちらに向かって
歩いて来る男性に

絶対に、私だと
悟られないように。

「どうした
 やっぱり気分、悪い?」

「今だけ、こうしていて・・・
 ください・・・」

こんなに、たくさんの人の
中からでも私は、貴方の足音
を探し出せる。
 
そう、貴方は幼い頃の事故で
右足を少しだけ引きずっていた
 
その足音が近づき

遠ざかって行く・・・
 
それでも、私の震えは
止まる事は無い。
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