蔓薔薇
「はい
 それでは失礼します」

前を見て歩き出す私を
イサオさんは呼び止めた。

「ミオちゃん
  
 アキラには、ずっと好きな人
 が要るんだ・・・
  
 君の想いは、アイツに
 受け止めてもらえない
 かも知れない」

「知っています、もし
 受け入れてもらえなくても
 今の私なら大丈夫です

 イサオさん
 貴方の言葉が私のここ(胸)
 にある」
  
私は、やっと心から笑う事が
できた。
 
愛想の無い私が初めて見せた
笑みに、彼は少し戸惑っている
ように感じた。

この何年間、一度も笑った事
など無かった私の笑顔はきっと
引きつっていたに違いない・・
 
「俺は・・・何をしてる
  
 彼女に偉そうに言いながら
 俺自身が過去に縛られている
 くせに・・・
  
 彼女の笑顔を見た後のこの胸
 の感情はいったい・・・
  
 どうしたんだろう・・俺は」
< 86 / 361 >

この作品をシェア

pagetop