あなたのメール、代行します。
「えー、タイムオーバーとは、どういった意味で?」


「えっとえっと、ちょっと予定が入っちゃって」


「えー、予定とは、どういった意味で?」


「えっとえっと、じゃあ、私行くね」


 まさかの無視!? うそでしょ!? ちょっと前までアタックチャーンスだったのに!?

あ、まさかそれか! アタックチャーンスに告白出来ない男なんかいらないわと。

そんなヘタレに興味はないわと。確かに格好良くて、性格も良くて、面白いけど、それだけじゃ足りないわと。

そういうことなんですか、せんぷゎーい!


 ああ、せんぷゎーい、本当に立ち上がったよ。くっそー、せっかく俺の力でデートまでこぎつけたのに!


「えっとえっと、ナイトくん」


「へ、へい!」


 お、俺としたことが動揺している! 今、童謡を歌ったら、きっと音程はめちゃくちゃだろう。

童謡が動揺している、みたいな。あ、どうでもいいこと考えてる場合じゃなかった。


「えっとえっと、楽しかったよ! またあとでメールするね!」


「は、はい」


 うおー、もっと気の利いた返し出来ないのかよ、俺! でも、超素敵な笑顔!

実際、映画観ただけでほとんど話してないけど、楽しかったんなら良かったよー!


 あー、芽衣さん、走って駅に向かってるなー。きっとあれだな。緊張しすぎて、俺といられなかったんだな。


 ……あれ?


 芽衣さんが駅の前で誰かと話してる。遠目だから良くは見えないけど、なんか楽しそうに。

ていうか、誰かって言うか、あのシルエットは……。





 大仏だ。
< 33 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop