氷の女王に誓約を

ロンドンからの帰国子女。


十五歳のこの少年は、血の繋がった俺の弟だ。


今から三年前、仕事の都合で父さんの海外出張が決まってしまった。


長期にわたる出張ということで当初は家族全員でロンドンへ移住する案もあり、俺も朝飛も付いて行く気満々だったのだが、当時中学三年生だった俺はジュニアの国際大会で成績を残し始めた時期でもあり、俺に気を使ったのか父さん一人がロンドンに行くことになった。


だが小学六年生だった朝飛は海外に対して強い憧れを持っていたようで「どうしてもロンドンに行きたい!」と泣いて縋り、父さんと一緒にロンドンへ付いて行った。


小学生なのにかなりの行動力があるなと感心したものである。


日本とロンドンは何分距離がある。


父さんは仕事が忙しいのかなかなか休暇を取ることが出来ず、日本に戻れるのは夏休みの僅か一週間だけ。


朝飛だけでも日本に留まればいいのだが、父さんが一人になっては可哀そうと言って、朝飛も一週間近くしか滞在しない。


だからこうして直接会うのは約十カ月ぶり。
< 57 / 400 >

この作品をシェア

pagetop