偽りの結婚(番外編)
「ラルフ、お誕生日おめでとう。」
あれから、出来あがったスポンジに、丁寧にコーティングされたケーキ。
シェイリーンの祝いの言葉と共に、それを口に運べば―――
「ど、どうかしら?」
期待と不安が入り混じった瞳に問われる。
「うん、美味しいよ。甘さも控え目で僕にはちょうどいい。」
そう言えば、良かった…と、ほっと息をついて、自らもケーキを口に運ぶシェイリーン。
ケーキを食べ終わって、一息ついた後―――
ソファーに寄り添い合って座っていると、シェイリーンが静かに口を開いた。
「また、来年もここに旅行に来たいわ。貴方と二人で。」
「そうだな。」
それに同意するように答えれば、不意にシェイリーンの顔が上がる。
「けど、今度はちゃんと計画しましょうね?………もう、あんなに寂しい夜は嫌だから……。」
「ッ………!」
真っ赤な顔で。
最後の方は蚊の鳴くような声で、シェイリーンはそう言った。
シェイリーンなりの精一杯の譲歩。
「本当に……。君は、何回僕を落とせば気がすむんだ?」
そう言って塞いだ唇は、ブラウニーの苦く、甘い味がした―――
≪二人きりの旅行≫ END