偽りの結婚(番外編)
すると…―――――――
「ッ……すまない。」
いきなり焦ったように私を離し、思い出したようにそう言うラルフ。
離れて行く距離に少し残念だと思いながらも、ラルフと向き合う。
「お腹なら大丈夫ですよ。」
クスクスと笑いながら答える。
抱きしめたくらいで子供に危険は及ばない。
ラルフはほっと息をつきながら、まだふくらみのないお腹に手をあてる。
「また守るべきものが一つ増えた。」
「一緒に守っていきましょう。」
ラルフの手の上から、両手でお腹を覆う。
まだ小さくて、胎動もないけれど、確かにある命。
愛おしくて、この上なく幸せ。
「よろしくお願いしますね、旦那様。」
ラルフに向かって、幸せに溢れた笑顔を向ければ…
「あぁ、こちらこそよろしく。」
笑顔と共に口づけが降って来た。
私のお腹にやどった小さな命。
ラルフと私の愛の形。
貴方に会えるのはいつかしら。
そう思いながらお腹を擦る。
けれど、二人の子の誕生はまた別の話…―――
END