ジキルハイド症候群



いったん消えれば数分後には着信になる。開けば、心が折れてしまいそうな着信履歴。
その全てが蒼真だった。


あたしは、ゆっくりと通話ボタンを押した。


「も『恵里!!』」


あたしの声を遮り、蒼真の焦った声が鼓膜を響かせる。


『今どこにいる!?』

「………知らないとこ」

『っ目印とかは!』


携帯を耳に当てたままぐるりと広場を見渡す。
目印、目印………あ、


「立花動物病院がある」

『分かった、そこにいろ!!』


ブチッと電話が切られた。
ツーツーと無機質な音を聞きながら電話を離す。


(蒼真……怒ってる……)


あたしは、蒼真に迷惑しかかけてないんじゃないかしら?


ため息が溢れた。


それから、二十分もしないうちに、バイクの音が近づいてきた。


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