ジキルハイド症候群



蒼真は、何か言いたげだったけど。


「座ってお腹見せなさい」

「お腹?」

「お母さんには分かってるからね」


降参だわ。
あたしは、渋々ソファーに座ると制服を上げた。
よくよく見てみるとどす黒く痣になっている。


救急箱を持ってきたお母さんは、あたしのお腹を見るなり、ため息をつく。
看護師の顔だった。


「酷いわね、誰にやられたの?」

「………」

「蒼真君は?知ってるの?」


静かに首を振る。
蒼真に言ったら最後、どうなるか分かっているから。
心配させたくない。


「………痛い?」


腹部にお母さんは手をやって軽く押す。
うっと息を詰めた。


「とりあえず、湿布で様子見ね」


手際よくお母さんは救急箱から湿布を取り出してあたしの腹部に貼ってくれた。


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