ジキルハイド症候群



救急箱を直しているお母さんの姿を見ながら、あたしは口を開いた。


「お母さん、茉里は?」

「茉里?まだみたいよ」

「そう……」

「どうかしたの?」


救急箱を元に戻したお母さんが、あたしの隣に座り直す。


「………何でもない」

「………」


お母さんは、あたしの手を取ると、優しく撫でる。
お母さんの手、温かい。


「茉里と、何かあったの?」

「………なんで?」

「何となく」


お母さんって凄いと思った。
エスパーみたい。


「大丈夫、何もないよ」


それでもあたしは、笑ってお母さんを安心させる方を選んだ。


「なら、いいけど……」


納得していないようだったけれど、何も話さないあたしに渋々引き下がってくれた。


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