ジキルハイド症候群



その時、玄関の方で物音がしたかと思えば、ただいまー、とあたしより高めの声が聞こえてきた。


「おかえり」

「ただいま………あれ?お姉ちゃん何かあったの?」


姉を心配する妹の振りをする。
あたしの中に苛立ちが込み上げてくる。


「何もないわよ」

「ふーん……あ、今日の夜ご飯はなに?」

「エビフライよ」

「やった!着替えてくるねー」


嬉しそうに手を合わせた茉里は、くるっとあたし達に背中を向けて自分の部屋に行く。


「………あたしも着替えてくるね」

「そうしなさい」


あたしは、鞄を持つと早々にリビングから出る。
今、茉里をひっぱたきたくて仕方ない。
リビングを出るときに一瞬だけあたしにだけ見せた勝ち誇ったような笑み。


それで、全てが確信に変わる。


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