ジキルハイド症候群
人はもう、信じない。
あたしは、蒼真の手を退けると立ち上がる。
「じゃあ」
教室に帰ると足を踏み出したあたしに蒼真は声を投げる。
「わかった」
肩越しに振り返る。
「勝手にする」
「………どうぞ」
(もう二度と会わないけど)
会う予定もない。
あぁ、だいぶ時間をくった……二限から出よう。
やれやれと準備室から出たあたしの頭の中からは既に蒼真の事は消えてなくなっていた。
あたしは、知らなかった。
蒼真という人間を。
そして、その本質を。
あたしは、知らなかったんだ。