ジキルハイド症候群



慌てているあたしに那祁はただならぬ気配を感じてくれたみたいだ。
何時もより声のトーンが下がる。


「詳しい話は出来ないの……!!蒼馬を、止めて……!!」

『………分かった』


那祁は、何も聞かないで、廉にも言うからと電話を切った。


………これで、安心は出来ない。


力の入らない腕を奮い立たせてなんとか起き上がる。
着替えることもしないで、玄関まで向かう。


玄関まででもうフラフラだった。
足元も覚束ない。


(行かなきゃ……)


ドアノブに手を伸ばしたが、その前にドアな前に引かれた。


「ただい……恵里!何してるの!」


買い物袋を提げたお母さんだった。
お母さんはあたしを見るなり眉をつり上げてドアを閉めた。


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