桜の葉
美都は、妙に気の毒そうな顔をして……アタシの顔に人差し指を突き付けた。



「アンタは、光君しか見てない。
私だって嫌だよ。自分に構ってくれる理由が、自分の兄を想っての事だったりしたらさ。つまり、自分は見て貰えてないじゃん。」



美都の言葉が痛い。
……光の名前を、出さないで。



「光君は、もぅ居ない。忘れられない気持ちは分からなくはないけどね?
そろそろ前に進みなよ。」



「ッッッ!!!」



アタシは、立ち上がった。
無意識だった。


「美都に、アタシの気持ちなんか解らないッッッッ!!!」


心臓が痛い。
ギュッと、掴まれてる感じ。


「好きな人が、急に居なくなったら、絶対に普通じゃ居られないよッッッ?!光を、アタシが忘れたら…光が本当に消えちゃう……ッッッ」



目頭が熱い。
アタシの瞳からは、隠せなかった雫が、ポタッと落ちた。


美都は、ギュッと、拳を握って立ち上がった。


「朔良がそんなんだから、葉君が変なんじゃないのッッッ!?一番、淋しいのは、誰だと思ってんのッ!!」



美都の目からも、涙がポタポタ溢れてきてる。


「朔良には、家族も、私らも居るじゃん!?葉君には、アンタしか居ないでしょう!?」


教室で、アタシ達は怒鳴り合ってる。
泣きながら。
倉石も、クラスメイトも、ポカ~ンとしてる。



「アンタ見てると、腹立つッッッ!!!」




美都は。
そう叫ぶなり、教室から飛び出していった。


アタシは……片手で涙を拭った。
倉石が、アタシの肩に触れる。




「……美都を、お願い。アタシは平気。」




倉石は、無言で頷くと、教室を出て行った。

一人残されたアタシは……
カバンを掴んで…教室を後にした。

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