青い瞳のガレア
　シャーラステアは、烏の眷族であるガレアが、月を見て何かを感じているように思えていた。

「確かに、しばらく前から夜の風が騒がしいとは思っていた」

　ガレアは窓の外へ目をやり、ぽつりと言った。

「…それだけじゃないんだ。時々体の震えが止まらなくなる」

　ガレアは窓を開けて月を見上げ、何かに耐えるように両手で我が身を抱き締める。

「世界が崩れ落ちるような、恐ろしい幻視が現れる」

　昔話になぞらえ「藤の賢者」と呼ばれるほど卓越した知性と、落ち着いた物言いから大人びた印象があるが、ガレアはまだ魔暦の成人も迎えていない、16才の娘に過ぎない。

　人間と同じ多感な時期に、世界の存在を脅かすような異変の天啓を受けたのだ。

　ガレアが戸惑い、怯えていることは、山羊の眷族であるシャーラステアには容易に察せられた。
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表紙・目次

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