この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


――――――――――…



「…で。祐史さんは?」


そう尋ねてくる尭くんの家のリビングで、ジロリと疑り深い眼差しを向けられて。



「さっきね、一緒にマンションまで行ったんだけど…。
やっぱり祐くんを思う気持ちは、チガウって分かったから。

気づいたら、“ごめんなさい”って言って尭くんの所へ来ちゃった…」


彼らしいシックなソファへ腰を下ろす私の脳内では、さっきの光景が鮮やかに蘇った。


立ち去った祐くんに対して、言わなければいけないコトがあったのに…。



「っの…、アホ!」


「・・・っ」


俯き加減でグルグル考えていた私を、ピシャリと咎める大きな声が部屋中に響く。



ああ怒ってる…、考えるまでもなく怒ってますよね?


ビクビクしながら向かいに座る彼を窺えば、やはり眉根を寄せてコチラを捉えていた。


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