この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


“柚ちゃん、まだ早くない…?”


さすがに、いつか…と思って憧れていた腕時計をプレゼントされて驚いたけど。



“似合う女になれば良いだけよ”


アッサリ言いきった姉に、いたく感動したのが2年前のコト。



それまでファッション時計といえる、割にお手頃ブランドの時計しか持っていなかった私。


いざ社会人になると、相手の手元を見る機会が多い事に気づかされて。


素敵なJ12も、仕事のモチベーションを上げてくれるひとつとなった。



…まぁ、未だにコレに似合う女になれないコトが玉にキズだ。



「バカな頭でアレコレ考えるより、早く丈夫な体を動かして来い」


「・・・」

何も口にしていないのに、どうして性悪男には分かるのだろうか?



「っ、行って参りますぅうう!」

チッと、盛大な舌打ちをお見舞いして出て行きたいのは山々だけど。



仮にもヤツはチーフ――、そう怒りを抑えて重い足取りで銀座店へ向かった。


< 32 / 178 >

この作品をシェア

pagetop