この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


しまった!と言わんばかりの彼女の手には、お店の商品ではない物が。



「これって絶対、さっきのお客様の…」


肌触りの良いシルクは、一見して分かる超高級ブランドのストールだ。


このガラガラ状態で試着をしたのは、さきほどの蘭さんという女性のみ。


どう考えてみても、彼女の持ち物で間違いない。



ヤバい…、感傷とか浸ってる前に初歩で躓くなんて――



「ま、まだ近くに居るはずだし、渡して来ます…!」

言い切るよりも早く、私はヒールをカツカツ鳴らしてエスカレーターを目指した。


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