この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
真下へと一直線に向かった理由、それは…――
“このあともお買い物なさいますか?
もし宜しければ、お預かりいたしますよ?”
“ありがとうございます――でも、もう帰りますので…。
実はもうすぐ旅行で、その準備があるから…”
“彼女は明後日から、彼と海外ハネムーンなのよ”
“菫ってば、そんな…”
こんなやり取りを交わしていたし、あのまま帰ったと推察出来るからだ。
「申し訳ございません、失礼いたします…!」
お客様の脇をすり抜けるようにして、カンカンと軽快なヒール音でエスカレーターを降りれば。
4階にある-ange-から地上1階への到達は、そう時間がかからずに済んだ。