この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


仕方なく退出したドアの先でイヤイヤ構えると、次なる指示を待つことにした…。




「なに携帯の電源オフにしてんだよ」


「は?…って、ああ!」


すると約5分後に現れた彼は、明らかに苛立ちながら私を見下ろしているけども。


祐くんとの電話を終えて、逃げるようにオフした事を忘れてた――…



「出先で電源切れちゃって、そのまま…みたいな?」

そんな事を言えるワケもなく、うーん…と首を捻って誤魔化してみれば。



「まぁ良い。ほら行くぞ」


「はぁい…」


「腑抜けた声出すな」


今度も華麗にスルーですか、どこまでも冷たい男め。


呆れたように溜め息を吐く彼に促され、まだ賑わしいオフィスを退散して行った。


< 61 / 178 >

この作品をシェア

pagetop