この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
仕方なく退出したドアの先でイヤイヤ構えると、次なる指示を待つことにした…。
「なに携帯の電源オフにしてんだよ」
「は?…って、ああ!」
すると約5分後に現れた彼は、明らかに苛立ちながら私を見下ろしているけども。
祐くんとの電話を終えて、逃げるようにオフした事を忘れてた――…
「出先で電源切れちゃって、そのまま…みたいな?」
そんな事を言えるワケもなく、うーん…と首を捻って誤魔化してみれば。
「まぁ良い。ほら行くぞ」
「はぁい…」
「腑抜けた声出すな」
今度も華麗にスルーですか、どこまでも冷たい男め。
呆れたように溜め息を吐く彼に促され、まだ賑わしいオフィスを退散して行った。